品質マネジメントシステムのリストラと文書のスリム化について考えてみたいと思います。
組織によっては審査や内部監査の都度、文書が増え、必要のない文書や記録を作成し、
その結果膨大な文書体系になっているケースが見受けられます。
記録についても何のために残しているのかさえ分からないようなものもあったりします。
無駄は極力排除し、必要最低限の文書・記録にスリム化していきましょう。
■ 無駄な記録は、止めよう
品質マニュアルや管理規定に定めている帳票を、一つ一つチェックして、役に立って
いないものは、廃止する方向で考えましょう。
その、記録や台帳は必要ですか? 偉い人の捺印は必要ですか?
必要な記録とは、こういうことです
1) それを受けて誰かが仕事(プロセス)をする
2) 幹部や経営層に必要な情報を伝える
3) トラブルがあった際の調査や弁明のために必要
4) それがないと、顧客から信用されない
5) 経営方針の実現、改善活動のために必要
審査対策以外に用途がない帳票は、不要な帳票です。
例えば、文書管理台帳、内部監査年間計画表などは、機能していないでしょう。
ただし、今使っているISO用帳票は形式的で役に立たないけど、実務として必要な
プロセスもあります。
例えば、購買先評価とか、予防処置などです。これらも、今の帳票は廃止しますが、
代わりの(実態に合った)方法を考える必要があります。
■マニュアルに管理規定の内容を吸収し、管理規定をゼロにする
現在、従業員が300人くらいまでの中小企業では、管理規定ゼロ、マニュアル1冊のシステム
が主流ですが、9001:2000版以前に認証取得した多くの中小企業は、20くらいの管理規定を
作り、このために、規定間の整合性のための改訂管理、配付管理の文書作業に追われます。
2001年に発行された本部のガイドラインであるISO/TR10013「品質マネジメントシステムの
文書類に関する指針」では、品質マニュアルの項目で「小規模組織の場合、ISO9001で要求
する全ての手順書を始めとする品質マネジメントシステム全体を一冊のマニュアル
(single manual)に記載するほうが適切なこともあるだろう。」と明確な説明があり、
手順を含めた一冊のISOマニュアルに一定の評価が与えられました。
■ 無駄な管理規定は、止めよう
管理規定自体が要らないこともあります。品質マニュアルとほとんど内容が
同じだったら、品質マニュアルに統合しましょう。
それ以外にも、無くても困らない管理規定があるはずです。
例えば、職務分掌規定は、作るのが面倒くさいばかりで、実際には使いません。
検査管理規定は、個別製品の検査基準があれば、案外必要ありません。
これらもキッパリ廃止しましょう。
その他の文書についても、その文書が本当に必要かどうか、チェックしてゆきましょう。
必要な文書とは、こういうことです。
1) 基準値を決める(検査、工程)
2) それを見ながら仕事をする
3) 新人の教育用
4) 技術の伝承
5) 外部への説明用
審査対策以外に用途がない文書が不要であることは、言うまでもありません。
■ 本業は自然体で
契約、受注、製造、サービス提供、出荷といった本業の部分に関して、ISO9001には
ほとんど具体的な要求がありません。だから、本業については、従来のやり方で問題が
無いならば、そのまま続けて行けばよいでしょう。
もし、お荷物ISOで、余分なことをしているのなら、ISOは気にしなくて良いので、
自分達が仕事をしやすいように変更してください。
■ 本気で改善する部分
ここまでは、役に立っていない仕組みを止める話しをしてきましたが、ISO9001の
メリットを出そうと思えば、強化したほうが良い部分もあります。
品質目標、技能訓練、図面管理、購買先管理、データ分析、苦情管理、是正処置
このあたりは、きちんとできていない組織が多く、ISO9001で強化したいところです。
これらについては、ISO9001の形式は忘れて、実態に合った、本当に管理レベルがアップ
する方法を考えてください。
実態に合った仕組みを作り、最後にポイントだけ合わせば、ISO9001には対応できます。
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