ISO9001:2008年版規格解説 7-1製品実現の計画~|簡素化ISO構築

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7.1 製品実現の計画


製品実現の計画とは、製品(サービス)が確実に行われるために必要なありとあらゆる計画の
ことを指しています。

たとえば、前述の人的能力、インフラストラクチャの計画なども製品実現の計画ですし、
それ以外にも目標を達成するための計画や、製品(サービス)を確実に提供できるように
するためのマニュアルなども計画に含まれます。

この計画には、次の内容が明確化されていなければなりません。
・ 品質目標、製品(サービス)に対する要求事項(顧客要求、仕様等)
・ 製品(サービス)に必要な業務プロセスや、関連した文書、資源
・ 製品(サービス)に必要な検証等の試験として何をしなければならないかと、
  といった合否判定基準
・ プロセスと、製品(サービス)が要求を満たすことが出来ているかを確認するための
記録(上記の検証記録などを含む)

これらの内容は、別に製品実現の計画、として文面を作成しなければならないわけであはりません。

重要なのは、必要に応じて、書式化したり、マニュアル化、フロー化、ログの取得などを行い、
自社の業務に影響を及ぼさない程度で実現することです。

つい、ここで新たな計画という言葉がでてくるので、わざわざ重複するにもかかわらず製品実現
の計画や、品質計画書などを個別に作ることがありますが、必ずしもそのような文章を作り
なさいと要求されているわけではないので、この要求事項の項目は、こののちに出てくる
プロセスや、検証等の項目が実現された結果として、上記の文面を何かしらの形で用意し
なさいという意味なので、自社に合った文書を作ることが最適な対応です。


7.2 顧客関連のプロセス

7.2.1 製品に関連する要求事項の明確化

製品について、明確にしなければならない要求事項がある、という定義がすでに出てきていますが、この項目に製品に関する要求事項として明確にしなければならない項目が定義されています。

・ 顧客が明確に要求したり、規定されている要求事項。
・ どのように製品(サービス)を引き渡すのか、引き渡し後のアフターフォローはどうするのか、といった要求事項
・ 顧客が明示しているわけではないが、明らかに要求されている事項や、その製品(サービス)に当たり前のこととして要求されるような事項
・ 法律や、規制等、準拠しなければならない要求事項
・ それ以外に、組織が必要と判断する要求事項

上記のことについては、前述の製品実現の計画に明確にする必要があります。

たとえば、製品(サービス)の仕様書、提案書、契約約款などが考えられます。

7.2.2 製品に関連する要求事項のレビュー

前述した要求事項が妥当なものであるか、製品(サービス)の情報を提供する前、契約する前、
注文を受ける前等の製品の情報として確定する前に、社内で確認してから提示しなければ
ならないということが要求されています。

また、顧客が要求事項の内容を書面でしてこない場合は、要求を受ける前に、レビューし
なければならないと要求されています。

レビューについては、次のことを確認しなければならないとされています。
・ 製品(サービス)の要求事項として、必要な内容が確実に定められているか
・ 内容の変更があった際に、以前提示したものと異なる内容がなんであるか、
それらの変更内容が要求事項を満たしているか。
・ 製品(サービス)を提供する能力が組織内にあるか。

また、これらのレビュー結果や、レビューの結果改善が必要だった場合などには、その記録を
維持しなければならないとされています。

さらに、レビューの結果等により、製品(サービス)の要求事項が変更された場合には、
関連した文書を修正し、変更内容を関係者に周知しなければならないとされています。

7.2.3 顧客とのコミュニケーション

顧客とコミュニケーションをとる方法を明確にすることを、次の事項について求めています。
・ 製品の情報に関するコミュニケーション(問い合わせ対応など)
・ 引き合い、契約、もしくは注文、または変更(営業窓口などの、製品そのものをどのように注文すればいいのかということ)
・ 苦情などの受け付け方法


7.3 設計・開発

7.3.1 設計・開発の計画

設計・開発とは、そもそも製品をこれから作るという段階で、設計図を作ることや、
具体的に製品を開発するというプロセスのことを指します。

設計開発においては、計画を策定し、計画には次の事項を明確にしなければならないと
されています。
・ 設計・開発の工程(プロセス、及び流れと具体的な作業内容等)
・ 設計・開発の各段階におけるレビュー、検証及び妥当性確認をどのタイミングで行うか
・ 設計・開発の責任権限

また、設計開発においては、連絡体制、報告体制や、情報共有の仕方を決めておき、
必要なプロセスが確実に実施されるようにしなければならないということが要求されています。


7.3.2 設計・開発へのインプット

インプットとは、設計開発に至る際に、要求される情報や、参照すべき情報のことであり、どのような事項があるのかを記録しておかなければならないということが要求されています。

また、要求事項に関しては、漏れがないように確認し、内容は分かりづらいものではなく、また矛盾するものでないようにしなければならないとされています。

たとえば、性能の要求が、法的要求に矛盾する、などの状況が内容にするということです。

ここで求められているインプットには次のものがあります。
・ 機能及び性能に関する要求
・ 法令・規制の要求
・ 過去に似たような設計・開発があった際の情報(問題があったことや、逆に成功事例など)
・ その他、必要な要求(デザイン、安全性など)

7.3.3 設計・開発からのアウトプット

アウトプットとは、設計・開発から得られる成果物と読み解くとわかりやすくなります。

まずポイントとして、アウトプットはインプットがきちんと満たされているのかを確認できる
ような形式にしておくことが求められているので、何らかの検証可能な成果物が必要という
ことが分かります。

また、アウトプットは正式にリリースする前に承認を受けていなければならず、
アウトプットの承認が得られていなければ、正式に製造等は出来ないということになります。

アウトプットは次の状態にしておくことが求められています。
・ インプットの要求を満たしている
・ 必要となる購買品や、製造(サービス開始)に当たって必要な準備や物品などの情報が
分かる(保管場所や、配送方法なども含む)
・ 製品を提供するに当たって、検証などした際の合否判定基準が含まれている
・ 使用方法などに関する情報がある(使用上の注意など)


7.3.4 設計・開発のレビュー

適切なタイミングでレビューをすることが求められていますが、このレビューは、設計・開発の計画に定めた通りに行わなければならないとされており、このレビューとレビューに対する対応の結果は記録しておくことが求められます。

また、レビューの参加者には、設計・開発に関連する部門の代表者が参加するようにすることも求められています。

レビューの内容は、次の内容になります。
・ 設計・開発の結果として出来あがる物が、要求事項を満たせるように設計・開発が進んでいるか
・ 問題を明確にしその問題に対する処置を検討する


7.3.5 設計・開発の検証

レビューと異なり、検証については対象がはっきりしています。

検証とは、インプットとアウトプットの比較により、アウトプットがインプットを満たすことが出来ているのかを確認することです。

もちろん、この検証の結果と検証結果に対する対応も記録しておくことが求められています。


7.3.6 設計・開発の妥当性確認

妥当性確認とは、設計・開発の結果出来あがるものが、本当に要求事項を満たすようなものになっているのかを確認することです。

たとえば、試作品を作ってみたり、完成したものを最終検証してみたりすることが挙げられます。

この場合、妥当性確認は製品の引き渡しまたは提供の前に行わなければならないことになっています。

7.3.7 設計・開発の変更管理

設計・開発を進めていくと、どうしても当初の予定と変わってきてしまうことがあります。

そのために、各種変更があった場合には、その変更について、実施前に承認を得ることと、
その変更の内容について記録することが求められています。


7.4 購買

7.4.1 購買プロセス

購買とは、自社以外の組織を使用し、物品を買ったり委託したりすることを言います。

そのため、自社の管理外の業務となってしまうことがあるため、購買したものについても
確実に品質に適合するように管理しなければならないとしていますが、その管理の程度は、
購買が品質に与える影響次第で区分してもよい、ということになっています。

ただし、必ずやらなければならないこととして、供給者を本当にその製品の供給が可能か、
供給される製品の品質が問題ないか評価しなければならない、としています。

この評価の結果、問題があった場合はその供給者を不採用とすることも考えられるわけですが、
場合によっては、将来の改善などを条件とする、条件付き採用等ということも考えられます。

また、その評価記録や、不採用の場合の処置記録を残すことを求められています。


7.4.2 購買情報

購買情報とは、購買する製品(外部委託するサービス等)の情報、すなわち仕様や供給者に
対し通知する要望等のことを指し、この内容は供給者に対し通知する前に、内容が妥当で
あることを社内で確認しなければならないとされています。

その中には次のうち「該当するもの」を含めなければならないとされています。
・ 製品、手順、プロセス及び設備の承認に関する要求事項(供給者から提示されたものの承認等)
・ 要員の適合性確認に関する要求事項(人材の能力等)
・ 品質マネジメントシステムに関する要求事項(マネジメントシステムに適合させるために、
供給者に遵守させるべき要求事項等)


7.4.3 購買製品の検証

購買した製品が、本当に要求していた内容を満たしていたのかは確認しなければならないと
されています。

その場合は、検査をしてもほかの活動(検品など)を実施してもよいことになっていますが、
何をするのかは定めておかなければならないと要求されています。

また、購買製品を供給先で検証することになった場合には、購買情報の段階で、どのような検査を行うのか明確にしておくことが求められています。


7.5 製造及びサービス提供

7.5.1 製造及びサービス提供の管理

この項目は、まさに実際製造作業やサービスを行う上で、実現しなければいけないことを
定義されているところです。

まず、こちらの要求事項では、業務を実施するにあたっては、計画され、管理された状態で
実施しなければならないとされています。

ここでいう計画とは、漠然と業務をやるのではなく、必要な決めごとをする、ということです。

また、管理については明確にやるべきことが次の通り定義されています。
・ 仕様など、自分たちが提供しているのが、どのような製品(サービス)なのかが分かるように情報が参照できるようにする
・ 必要に応じて作業手順が利用できる(作業手順をすべて作れと言っているわけではないので注意)
・ 適切な設備が使用できるようになっている
・ 必要な監視機器や測定機器が使用できるようになっている
・ のちに8の要求事項で定義する監視や測定が実施されている
・ 製品が製造された後のリリース(提供)の仕方や、引き渡し後のアフターフォローの
内容などが実施されるようになっている
といった状態です。

上記のことを実現するために、QMSに取り組まれている多くの会社様では、業務フローなどを
作成されているところが作成されていますが、ついつい、作業手順を細かく作りすぎて運営が
うまくいかなくなるといったことが多いようです、が上記でも解説させていただいた通り、
全ての手順を作れ、ではなくて、必要な手順が利用できる、が規格で要求されていることなので、
過剰な対応に注意です。

7.5.2 製造及びサービス提供に関するプロセスの妥当性確認

ここは、さまざまな場面で分かりづらいとよくいわれる項目なのですが、平たく説明すると、
「製造された物などが、製造後の検証では確認のしようがなく、市場に出てからしか不具合が
起こるかどうかわからないような場合には、それまでのプロセスにおいて、確実に問題が解決
されていることを徹底することで、最終的なチェックが完全にできなくても
問題がないとみなすこと」をプロセスの妥当性確認といいます。

さまざまな場面で起こりうることなのですが、たとえば、パソコンを一台組み立てた場合に、
そのパソコンが動作するか、というチェックは出来るでしょうが、中の基盤のハンダが、
一つ一つ問題なくついているか、等ということは今更中身を空けるわけにもいかないので
チェックができません。

そのため、その前段階の工程でハンダのチェックを行う工程を入れたり、もしくは絶対に
問題の起きないような機械などを使ってプロセスを実施すること等で、最終チェックでは見る
ことができなくても、おそらく大丈夫であろう、とみなすことがまさに妥当性確認となります。

この妥当性確認を行うには、次の手続きを入れなければならないと要求されています。
・ プロセスのレビューをどのように行うかを決め、また、承認するための基準を入れる
・ 妥当な設備を承認する、及び人員の能力などで適正を判断する
・ 特定の方法や手順を実施させる
・ 妥当性確認の結果を記録する
・ 再度妥当性の確認を行う


7.5.3 識別及びトレーサビリティ

冒頭、必要な場合には、という注意書きから始まります。

そのくらい、この要求事項は必要かどうかが組織によって大きく異なる項目です。

平たく言うならば、間違えてしまいそうな物品などを、間違えないように識別しよう、
というのがこの項目でいう識別です。

たとえば、
・ 良品と不良品の識別
・ 完了品と未完了品の識別
・ 顧客所有物と自社所有物の識別
などのことが考えられます。

そして次にトレーサビリティですが、このトレーサビリティとは、簡単に言うと、製品の状態を追跡可能な状態にしておこうという項目です。

最近では、食品の製造などで大きな注目を集めた、どこの段階で不良品が出たのか、等というものを、追跡可能な状態にすることをトレーサビリティといいます。

この活動は非常に多岐にわたるのですが、たとえば、
・ 製造番号と製造日時、工程の管理
・ 使用物品の管理
・ 作業担当者の管理
・ 工程ごとの細かなチェック
・ ログの管理
等といったものがあります。

つまり、トレーサビリティは、何か工程の作業で進むものに対して、問題が発生した時に、
どこの工程で問題が発生したのかを認識できなければ問題のあるような場合に
必要な項目になります。

特に、流れ作業などで製造工程等を作っている場合には、このトレーサビリティを確実に
実施しなければ、延々と不良を生み出してしまうことにもなりえますし、問題があった
場合に、回収する範囲などが特定できなくなってしまう可能性もあるので極めて重要です。


7.5.4 顧客の所有物

顧客の所有物をお預かりしている場合などは厳重な管理が必要です。

その場合、顧客の所有物について、どのように保護するのかを決めなければなりません。

また、顧客の所有物を万一紛失、破損などしてしまった場合や、顧客の所有物がきちんと使用できないような状態だった場合に、顧客に報告し、その記録を維持する方法を決めておく必要があります。


7.5.5 製品の保存

製品を出荷するまでの間、適切に保護しておかなければ製品に不良などが起こってしまいます。

そのため、どのような梱包を行ったり、どのような場所に保管しておいたりなどということを
決めておく必要があります。

同様に、完成前の部品などについても、どのように保護するのか決めておく必要があります。


7.6 監視機器及び測定機器の管理

要求事項の文面は長いのですが、簡単にご説明しますと、8の項目で出てくる監視や測定を行うに当たって、その監視機器や測定機器自体の数値が誤っていた場合、正しい結果が出てこなくなってしまいます。

そのため、監視機器や測定機器は確実に管理することを求めているのですが、その管理とは、
・ 監視機器や測定機器自体の数値が正しいことを検証する。
・ 機器の調整を適切に行う
・ 調整などがきちんとできているものとできていないものを識別する
・ 測定した結果が無効になるような操作が出来ないようにしておく
・ 取扱時に破損したりしないようにしておく
などを行い、検証などした場合は検証した記録をつけておくことが必要です。

もちろん、測定機器に問題があった場合には、過去にさかのぼって本当に関し、測定結果が大丈夫だったか確認を行わなければならないとされています。

また、ソフトウェアを使用して監視や測定を行う場合には、そもそもそのソフトウェアが
求められる監視や測定を実施するのに適しているのかを事前に確認したうえで使用することを
求めています。

測定器を使用用途に応じて分類し管理する
測定器の全てに日常点検や校正が必要な訳ではない。
管理の程度と方式を定め、まず、測定器を分類し、校正が必要な測定器と日常点検だけで
校正不要の非管理測定器に大別する。

ここまでは、管理対象でそれなりの管理が必要ですが、それ以外に目安用に使われる測定器は、
管理対象外であり、管理の証である管理番号を測定器に貼付しません。
測定器だから何んでもかんでも日常点検や校正を行うのでなく、測定器の使用用途に応じ、
管理測定器、非管理測定器、対象外(目安用)と分類します。
この場合はこうすると基準を決め、測定器の「管理の程度や方式」を定め、
測定器が管理された状態にするのです。




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