5.1 経営者のコミットメント
まず、ここで定義されている経営者とは、社長のことを必ずしも指しているわけではなく、
マネジメントシステム上のトップである、ということを理解しておいてください。
規格上でも、経営者と言いつつ、トップマネジメントという表現をとっており、次のことを
しなければならないといます。
・ 法律を守らせる
・ 顧客要求を満たすことの重要性を周知する
・ 品質方針を作る
・ 品質目標を作らせる
・ マネジメントレビュー(5.6参照)を実施する
・ 経営資源が必要な時に使えるようにする
これらを行うことが、トップマネジメントの仕事であると定義しています。
ここで、次の言葉が冒頭に出てくることで表現がややこしくなっているのですが、規格では、
「品質マネジメントシステムの構築、実施、改善することに対するコミットメントの証拠を
次の事項によって示さなければならない」という言葉が冒頭に出ています。
端的に言うならば、先ほどの6つの項目を実現するのは、トップマネジメントが確実に
マネジメントシステムを運用させているという証拠となるんです。
ということを言いたいわけです。
ちなみに、コミットメントには承認、同意等の意味がありますが、要は、これらのことに
確実にトップは関わってくださいね、人ごとじゃないんですよ。
というわけです。
5.2 顧客重視
ここでは、品質マネジメントの基本中の基本である、顧客重視について書かれていますが、
この文章だと非常に分かりづらいところです。
トップマネジメントは、顧客要求事項が決定され、満たされていることを確実にする。
これでは、何をすればいいのかよくわかりません。
ここでのポイントは、
・ 顧客要求を決定するために、何をすべきなのか
・ 満たされていることはどうすれば確認できるのか
これらを出来るような体制を社内に導入させなさい、と言っているわけです。
つまり、ここで何か具体的な要求が出来ているわけではなく、これらのことに関して、
トップマネジメントが関与して、必要な対応の指示や、承認などを行いなさいと
言っているのです。
5.3 品質方針
品質方針とは、品質において考えるべき考え方や、方向性などを示した文面のことを言います。
上記のような目的のため、品質方針には次のような内容である必要があります。
・ 会社の経営方針などと方向性がずれない
・ さまざまな要求事項に適切に対応していく考えや、マネジメントシステムを改善していくという考え方が含まれている
・ 品質目標を設定する際、レビューをする際に参照できる内容である。
また、これだけでなく、
・ 組織全体に周知されている(理解されている)
・ 適切な内容かをレビューする
これらも要求されています。
5.4 計画
5.4.1 品質目標
実は、品質マネジメントシステムにおける難関の一つがこの品質目標です。
なぜならば、品質目標は、自社にとって目指すべき品質の目標であり、この目標の設定が
きちんとでき上っていなければ、どのような活動をしてもきちんと品質が実現出来ている
のかが分からなくなってしまうため、マネジメントシステムが向上しているかどうかさえ
分からず、改善が必要なのかも判別できなくなってしまいます。
その上、品質目標については、何について定めなければならない、等の決まりも、誰が、
どの単位まで作らなければならないのか(会社で一つなのか、部門で一つなのかなど)
も定められておらず、単に、「達成度が判定可能である」
としか定まっていません。
この目標については、自由に設定できるわけです。
しかし、達成できたかどうかわからなければ意味をなさないため、達成したかどうかが
きちんと判定できるような、具体的な、もしくは数値化された目標を設定しなさい、
ということが決まっています。
5.4.2 品質マネジメントシステムの計画
品質マネジメントシステムの計画とは、ストレートに言うならば、品質マネジメントシステムをどのように動かすかを定めた計画のことです。
しかし、文面をよく見ると、品質目標を満たすために、ということも書いてあります
つまりは、品質目標を達成するために具体的に何をするのかということも計画しなさい、
ということです。
また、計画を変更した場合には、他に影響が出ていないかを確認したうえで、
他の規程やルールなどに影響を与えていた場合はそれも含めて修正することを求めています。
5.5 責任、権限及びコミュニケーション
5.5.1 責任及び権限
マネジメントシステムの運営のために設定した責任や権限は、組織全体に周知しなければ
ならないとされています。
5.5.2 管理責任者
管理責任者を管理層の中から任命しなければならないとされています。
なぜならば、全てを総括する責任者がいなければ、運用作業が停滞してしまったり、
現状が把握できなくなってしまったり、責任が分散されることで、プロセスが
うまく動かなくなってしまうことが考えられるためです。
その管理責任者には、
・ マネジメントシステムの維持などの運用責任、そのための権限
・ マネジメントシステムの運用状況の報告責任
・ 顧客要求事項に対する認識の向上を行う責任、そのための権限
を与えなければならないとされています。
ただし、責任者は単一の担当者ではなくて、組織でもかまいません。
もちろん、上記の役割を別の人で分担しても構わないことになっています。
5.5.3 内部コミュニケーション
社内のコミュニケーションが適切に行われて、情報交換が行われ、マネジメントシステムを
よりよく改善できるように計らいなさいと要求されています。
これには、会議体の創設や、ミーティングの実施などがありますが、交流会などを実施する
という方法をとる組織もあります。
5.6 マネジメントレビュー
5.6.1 一般
マネジメントレビューとは、マネジメントシステムの運用状況を、トップマネジメントが確認することを指します。
マネジメントレビューは決められた時期に行わなければならないことになっています。
では、このレビューで何を確認するのかというと、次のような状況です。
・ マネジメントシステムがうまく動いて、成果を出せているか
・ マネジメントシステムに改善の必要性はないか
・ 品質方針や、品質目標に変更の必要性はないか
これらを確認するために、情報として確認しなければならないものをインプットといい、
その結果、実施することになったことをアウトプットと言っています。
5.6.2 マネジメントレビューへのインプット
マネジメントレビューには、次の情報を持ち込まなければなりません。
・ 監査結果
・ 顧客からの要望や、クレームなどの情報
・ 業務の運営状況や、その成果、製品(サービス)の品質
・ 予防処置や是正処置の対応状況
・ 前回のマネジメントレビュー結果の対応状況
・ マネジメントシステムに影響を及ぼす可能性のある変更(業務、施設など)
・ 改善のための提案
5.6.3 マネジメントレビューからのアウトプット
マネジメントレビューでは、結果として、アウトプットの中に次の項目を含めなければ
なりません。
・ マネジメントシステム、業務プロセスの改善
・ 顧客要求事項への対応、そのための製品(サービス)の改善
・ 経営資源の必要性があった場合、その資源の投入の決定
決定、及び処置を含めなければならない、とされているのですが、これは、
全て実施しなければならないというわけではなく、実施するならその内容を、
しないならしないという決定を含めなさいと言っているのがこの項目のポイントです。
⇒6.1資源の提供
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